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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
34 白雲の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页
「今もそれを話していたところだ、おっつけこれへ、おみやげ持ってやって来る」
「そうか知ら――あたいは、どうも、あの七兵衛おやじはもう、ここへ来られないように思われてならない」
「どうして?」
それを聞き咎めたのは白雲でしたが、さっと面の色を失ったのはお松でした。
「どうしてって……」
茂太郎は、むずかるような声で、
「あたいはどうも、七兵衛おやじが怪我をしたように思われてならない」
「怪我!」
「怪我ならいいが、もしかして、縛られてしまやしないかと……」
「何を言うのです、茂ちゃん」
お松がたまりかねてたしなめると、茂太郎は、
「どうしても、あの七兵衛おやじの身の上に、変ったことが起ったに違いない」
「そんなことが、わかるものですか」
「だって、あたいは、もう二日というもの、あのおやじが、つかまって、縛られて牢屋へ入れられたところを夢に見た」
「ほんとに、いやなことばかり、茂ちゃん――何も悪いことをしない人が、縛られたり、牢屋へ入れられたりなんかするものですか」
「そうかしら、でも……」
「それに、白雲先生と、つい一昨日、お話をしていたと申します、いやなことを言うものではありません」