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だいぼさつとうげ

大菩薩峠13

中里 介山

中里介山『大菩薩峠13』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 349,705 字 · 678 页

青空文庫

六十九

かくて北上、勿来の関を過ぎて旅情とみに傷み候へ共、小名浜の漁村に至りて、ここに計らずも雲井なにがしと名乗る山形の一奇士と会し、相携へて出発、同氏にそそのかされて、磐城平より当然海岸伝ひに北上いたすべき道を左に枉げ候事、好会また期し難き興もこれあり候次第、悪しからず御諒察下され度候。

松島の月も心にかかり候へども、この辺まで来ては白河の関、安達ヶ原、忍ぶ文字摺の古音捨て難く候ことと、同行の奇士の談論風発、傾聴するに足るべきものいと多きものから、横行逆行して、つひに今夜白河城下に参り、都をば霞と共に出でしかど、秋風ぞ吹くといふ古関のあとに、徘徊去るに忍びざるものを見出し申候。

白河の関址と申すところは、一の広袤ある丘陵を成し、樹木鬱蒼として、古来斧斤を入れざるものあり、巨大なる山桜のさるをがせを垂れたるもの、花の頃ぞさこそと思はれ申候。この森を中に入り歩む心地、出でて遠くながむる風情、いかにも優雅なる画趣有之、北地のものとは見えず、これに悠長なる王朝風の旅人を配すれば、そのまま泰平の春を謳ふ好個の画題に御座候。

これより須賀川、郡山、福島を経て仙台に出づる予定に御座候。