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てんぐいわのさつじんま
天狗岩の殺人魔
山本 周五郎
「少年少女譚海」1938(昭和13)年春の増刊号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,872 字 · 18 页
木村祐吉は医科大学の二年生、種田京太郎は理科学の研究室へ勤めているが、二人とも平野氏にとっては甥に当り、五十万円の財産は将来この二人が受継ぐことにほぼ話が定っていた。……今度は二人とも論文を書きにこの家へやって来たのだが、京太郎は海岸にあるホテルに住い、勉強の暇さえあれば伯父を慰めに訪ねて来るのに反し、この家にいる祐吉の方は、論文などそっち退けで、朝から家を外に飛廻っているという有様だった。
温和しい京太郎は、伯父にやっつけられて、祐吉が気を悪くしたらしいのを見ると、
「ああもう九時ですね」
と時計を見ながら静かに立った。
「帰って勉強する時間ですから、僕は是で失敬します」
「そうか」
平野氏は残念そうに、
「いまの話は面白かった。火山岩を或種の電波で金に還元する、――それが事実だとすれば世界の経済界をかき廻す事が出来るぞ。まあ精々やって呉れ、直ぐに資金を出すという訳には行かんが、大丈夫と定れば」
「どうか伯父さん!」
京太郎は羞しそうに遮った。
「そんな大きな声で仰有らないで下さい、当分この研究は秘密にして置きたいと思いますから、決して他言なさらないように」