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てんのうへいかにささぐることば

天皇陛下にさゝぐる言葉

坂口 安吾

「風報 第二巻第一号」1948(昭和23)年1月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,179 字 · 12 页

青空文庫

天皇陛下が旅行して歩くことは、人間誰しも旅行するもの、あたりまえのことであるが、現在のような旅行の仕方は、危険千万と言わざるを得ない。

「真相」という雑誌が、この旅行を諷刺して、天皇は箒である、という写真をのせたのが不敬罪だとか、告訴だとか、天皇自身がそれをするなら特別、オセッカイ、まことに敗戦の愚をさとらざるも甚しい侘しい話である。

私は「真相」のカタをもつもので、天皇陛下の旅行の仕方は、充分諷刺に値して、尚あまりあるものだと思っている。

戦争中、我々の東京は焼け野原となった。その工場を、住宅を、たてる資材も労力もないというときに、明治神宮が焼ける、一週間後にはもう、新しい神殿が造られたという、兵器をつくる工場も再建することができずに、呆れかえった話だ。

こういうバカらしさは、敗戦と共にキレイサッパリなくなるかと思っていると、忽ち、もう、この話である。

私のところへは地方新聞が送られてくるから、陛下旅行の様子は手にとる如く分るが、まったく天皇は箒であると言われても仕方がない。

天皇陛下の行く先々、都市も農村も清掃運動、まったく箒である。陛下も亦、一国民として、何の飾りもない都市や農村へ、旅行するのでなければ、人間天皇などゝは何のことだか、ワケが分らない。