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てんのうへいかにささぐることば

天皇陛下にさゝぐる言葉

坂口 安吾

「風報 第二巻第一号」1948(昭和23)年1月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,179 字 · 12 页

青空文庫

時代的な嗜好で、つまり、天皇は人気があるのだ。特に、地方に於て人気がある。田中絹代嬢と同じ人気であり、それだけのことにすぎない。

ところが、田中絹代嬢の人気は、彼女自身が自らの才能によって獲得したものであるのに、天皇の人気は、そうではない。たゞ単に時代自身の過失が生んだ人気であって、日本は負けた、日本はなくなった、自分もなくなった、今までのものを失った、その口惜しさのヤケクソの反動みたいなもので、オレは失っていないぞと云って、天皇をカンバンにして、虚勢をはり、あるいは敗北の天皇に、同情したつもりになってヒイキにしている、その程度のものだ。

然し、日本は負けた、日本はなくなった、実際なくなることが大切なのだ。古い島国根性の箱庭細工みたいな日本はなくなり、世界というものゝ中の日本が生れてこなければならない。

天皇の人気というものが、田中絹代嬢式に実質的なものならよろしいけれども、現在天皇が旅行先の地方に於て博しつゝある人気は、朕に対する人気、天皇服に対する人気で、もう朕と仰有らず私と仰有る、オカワイそうに、我々と同じ背広をきて帽子をふってアイサツして下さる、オカワイそうに。