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てんま
天馬
金 史良
「文芸春秋」1940(昭和15)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,407 字 · 70 页
「え有難う、紹介して戴きますわ」
「そうしたら」玄竜はじいっと彼女の笑顔を見つめていたが瞬間、そうだ今晩は久し振りにこの女を連れて帰るんだとひとり肚で定め込み、
「これを聞くと田中君の妹が妬きましょうぜ、へへへ」
「あら、そうでしたの、東京の恋人ってその方のお妹さん? おほほこれは面白いわね」
「そうなんですよ、そうなんですよ」と彼は我意を得たりとばかりいかにも愉快そうに叫んだ。「僕が東京を引き上げる時彼女が追いかけて来ると云って大変だったのです。兎に角田中君も今じゃ大いに芽が出て、もう中堅の作家ですよ。どうでしょう、彼を囲んで僕達が一度集ったら、その時も是非来て下さいね」
「え、それはむろん行きますわ」
「ところで、実はですね、田中君は大村君とは大学の同窓でとても親しい仲なんですよ」と後にぐっと身を反らして急に真剣な表情を作った。が、それには惨めとまでいえるようなほのかな明るい影が浮び上った。「そこで僕は田中君に大村君を口説いて貰おうという訳なんです。つまり芸術家を理解させるんですよ。そうです、これは確かにパリ娘のアンナに会ったこと以上に重大なことです。そしたらきっと僕はお寺へ行かないで済むと思うのです」