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「ダブックウ」ひょうりゅうき

「太平洋漏水孔」漂流記

小栗 虫太郎

「新青年」博文館、1940(昭和15)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,264 字 · 37 页

青空文庫

がズルズルと引きだされてくる。まもなく、そうして出来た自然草の橋のうえを、二人が危なげに渡っていたのである。いよいよ、目指す、“Nord-Malekula”

「坊や、ここが当分、私たちのお宿になるんだよ」

「日本かね、オジチャン」

「いや、日本へゆく道になるのさ。坊やが、ここで幾つも幾つもおネンネしていると、そのうちにお迎いの船がくるよ」

そして、キューネの気もハチロウの気も落着いた。みれば、果物も豊富、魚介も充分。ここから、時機がくるまで伸々と過せると、キューネもほっとしたのであった。

しかし、そうして何事もなかったのもたった一日だけ……。翌朝、果実を見つけに茂みのなかへ入ってゆくと、ふいに、眼のまえに薄赤いものが現われた。

「あっ、何だ。サア、坊や、はやくオンブしな」

前方でも、ザクザクと草を踏む音がする。やがて、ベゴニアの藪のなかへ蹲んだその生物を、キューネがぐいと引きだしたのである。とたんに、彼はアッと叫び、思わず離すまいと双手に力をこめた。それが、人間も人間、うら若い娘だった。

「Papalangi、ああ、Papalangi」

とその娘が絶え入るような喘ぎをする。