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たいへいようまじょう
太平洋魔城
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页
そこは、どうやら、海底要塞の、ごく底の方らしく、臨時というだけあって、まるで倉庫であった。器械を入れてあったらしい木箱や、まだときもしない貨物や、酒樽みたいなものが、ごたごたと山のように積みあげてある。そのすみに、古ぼけた寝台がおいてあった。それはまだいい。たまらないのは、この部屋にみちている悪臭だった。
「あ、たまらない臭だな」
と、衛兵長は、まっ先に顔をしかめた。
「なんだね、このむかむかする臭は」
「缶詰がくさったらしいんです。捨てろという命令が出ないので、そのままになっているんです」
と、部下の一人がこたえた。
「これは、やりきれん。早いところ、この日本猿を片づけてしまわないと」
衛兵長は、顔をしかめながらいった。
「日本猿を、こっちへつれてこい。鉄の足枷をはかせ、その鎖にゆわえつけとくんだ。貴様が逃げだせば、こっちの命までが、ふいになってしまうからな。しっかりゆわえておけよ」
無言の太刀川を、五人ばかりでおさえつけると、両脚に、鉄でつくったゲートルのようなものをはかせ、その合わせ目に、ぴーんと錠をおろし、更に鉄のゲートルの穴に、二本の重い鉄の鎖を通した。