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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页

青空文庫

(われわれ二人の格闘は一時休戦だぞ――)

「な、なにを、……」

リーロフ大佐は、床にたおれたまま歯をむきだして、どなった。たった今、ケレンコ司令官から、副司令の職をはぎとられたことが、大いに不平でならないのだ。

だが、喧嘩はとにかく一時おさまったらしいので、衛兵長は、室内へはいった。

「司令官閣下。この男です、監禁室にあてた倉庫の中から、とびだしてきた奴は」

そういって、クイクイの神様の背中を、どんと前についた。

「ほう、この髭もじゃか」と、ケレンコは目をみはって、

「ところで衛兵長、お前は、三人のあやしい男を発見したとかいったが、あとの二人はどうしたのか」

「はい、二人はその場で、鉄砲でうちたおしてあります。ご安心ください」

「おお、そうか」

と、司令官はうなずき、クイクイの神様の方にむいて、

「おい、髭もじゃ。貴様は、何者だ。又どうして、こんなところへはいりこんだのか」

クイクイの神様である三浦須美吉には、ことばは通じなかった。彼は、そんなことはかまわず、

「ああ、ゼウスの神よ、奇蹟をもたらせたまえ」

妙な言葉をとなえて、上目づかいに天井をみあげた。

「ああ神よ、床にはうこの牛男が、奇蹟をもたらすといいたまうか」