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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页

青空文庫

(あれ、リキーじゃないとすると、一体誰が叱られているんだろう?)

そのとき、隊長らしい艇員が後をふりむきざま、

「さあ、早くこっちへくるんだ」

といって、顔をまっ赤にして、一人の少年の首すじをつかんで、ひきずりだした。見ると、それは色のあせた浅黄いろのズボンに、上半身はすっ裸という恰好の、中国人少年だった。

「貴様みたいな小僧に、この太平洋をむざむざ密航されてたまるものか。この野郎めが」

艇員は拳をあげて、少年の小さい頭をなぐった。

「ひーい」

少年は、悲鳴をあげた。

「なんだ、密航者か」

「ふとい奴だ」

「いや面白い。これは、いいたいくつしのぎだ」

乗客たちは、てんでに勝手なことをいって、さわぎだした。

「さあ、早く歩け」

密航少年

と、隊長の艇員は叱りつける。と突然、

「やかましいやい」

とリキーが座席から立ち上って、どなった。

「密航少年の一人ぐらいで、なんというさわぎをやってるんだ。俺がかわって片づけてやらあ。さあ、その小僧をこっちへよこせ」

リキーは、松の木のような太い腕をのばして、少年をぐいとつかんだ。

「ああ、ちょっとお待ちください。この少年の処分は、ダン艇長がいたしますから、どうかおかまいなく」