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たいへいようまじょう
太平洋魔城
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页
「はあ、ではすぐ連絡方を、通信室へいって頼んできましょう」
事務長は、腰をあげて、艇長室を出ていった。急に時化模様となったので、他の艇員たちも、それぞれ自分の持場へ帰っていって、艇長室には、ダン艇長一人となった。
彼は心配そうに、窓の外をながめている。
「こいつはなかなか手ごわい雲行だぞ。すぐに針路を変えなきや、危険だ」
艇長は、操縦室と書いたボタンを押して、電話機をとりあげた。
「おお、操縦長か。あの雲を見たろう。針路をすぐに北へ四十度曲げてくれ」
「北へ四十度。するとマニラへはだんだん遠くなりますが――」
操縦長の声であった。
「仕方がない。このままマニラへ近づくことは、あの黒雲の中の地獄へ近づくことだ」
「はい。ではすぐ」
「そうだ、そうしてくれ。そして当分全速力でぶっ飛ばすんだ、嵐より一足先にこっちが逃げちまわないと、たいへんなことになる」
どこまでも不運なサウス・クリパー機であった。兇悪な共産党員に乗りこまれている上、いままた悪天候に追いかけられることとなった。艇長は、乗員の安全をはかるため、いままで目的地のマニラへ向けていた針路を、ぐっと北へ変えた。