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たいへいようまじょう
太平洋魔城
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页
「いや、そんなことを言っていただかなくてもいいのです。しかし気の毒なことをしました。リーロフ氏が墜落したのに、たすけることができなくて――」
「え、気の毒ですって? あれこそ天罰ではありませんか。あなたの綱を切った時には、私たちは思わず眼をおおいました。やつは悪魔です。でもあなたが無事に元気にかえってこられて、こんな喜ばしいことはありません。あの時、例の中国人少年石福海が、御恩がえしに、あなたをたすけにゆくといって、艇外へとびだそうとするのには、ほんとうにこまりました」
艇長がかたる少年の話に、太刀川はふと気がつき、
「ああ、石少年ですか。どこにいます」
「ここにいますよ。あなたの右手をにぎっているのが石少年です」
「おお石福海! お前は――」
「ああ太刀川先生、じっとして、先生の手、氷のように死んでいる。わたしすぐあたためて、生かしてあげる。はあ、はあ」
石少年は、返事するのもおしい様子で、彼の右手へ、一生けんめいに息をはきかけているのであった。
(石福海は、こんなに僕のことを思っていてくれるのか!)
太刀川の目頭は、急にあつくなった。彼は、じつと目をとじて、石少年のあたたかい息を感じるのであった。