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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页

青空文庫

耳をすますと、遭難者たちの声が、相変らず、もの悲しく聞えていた。

おそろしい渦

波は、いくらか小さくなったようだが、急に黒っぽさをました。

闇が身近にせまって来ると、石少年は、心細くなったのか、

「先生、わたし一晩中、泳ぎつづけても、大丈夫あるが、夜、何だかこわいよ」

といいだした。

「だまって、おまえは目がわるくて、二メートル先も、よく見えないのだろう。じゃ、夜だって昼だって同じことじゃないか」

「それ、ちがう、さっきの海魔、わたしの足くわえ、海の底、ひっぱりこむような気がする」

「はっはっはっは……何のことかと思ったら、それか。ところが僕は、あの海魔に、もう一度会いたいと思っているんだよ」

二人が、波にもまれながらこんな話をしている時であった。又も遠い海鳴のような音が、ごーっと聞えだしたかと思うと、とつぜん、闇の彼方から、

「あっ」

「あれ、あれ」

「きゃっ」

という悲鳴。

「先生、あの声は?」

「うん、みんなの声だ。いよいよ出たか」

「え、何がです」

「心配するな、何でもないよ」

そういってる間に、おびえきった声が、右の方からも左の方からも聞えだし、それが、だんだんひろがっていくような気がした。