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めおとぜんざい

夫婦善哉

織田 作之助

「海風」1940(昭和15)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,643 字 · 61 页

青空文庫

同情した、と帰って女房に言った。「あれでは今に維康さんに嫌われるやろ」夫婦はひそひそ語り合っていたが、案の定、柳吉はある日ぶらりと出て行ったまま、幾日も帰って来なかった。

七日経っても柳吉は帰って来ないので、半泣きの顔で、種吉の家へ行き、梅田新道にいるに違いないから、どんな容子かこっそり見て来てくれと頼んだ。種吉は、娘の頼みを撥ねつけるというわけではないが、別れる気の先方へ行って下手に顔見られたら、どんな目で見られるかも知れぬと断った。「下手に未練もたんと別れた方が身のためやぜ」などとそれが親の言う言葉かと、蝶子は興奮の余り口喧嘩までし、その足で新世界の八卦見のところへ行った。「あんたが男はんのためにつくすその心が仇になる。大体この星の人は……」年を聞いて丙午だと知ると、八卦見はもう立板に水を流すお喋りで、何もかも悪い運勢だった。「男はんの心は北に傾いている」と聴いて、ぞっとした。北とは梅田新道だ。金を払って外へ出ると、どこへ行くという当てもなく、真夏の日がカンカン当っている盛り場を足早に歩いた。熱海の宿で出くわした地震のことが想い出された。やはり暑い日だった。