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めおとぜんざい
夫婦善哉
織田 作之助
「海風」1940(昭和15)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,643 字 · 61 页
十日目、ちょうど地蔵盆で、路地にも盆踊りがあり、無理に引っぱり出されて、単調な曲を繰りかえし繰りかえし、それでも時々調子に変化をもたせて弾いていると、ふと絵行燈の下をひょこひょこ歩いて来る柳吉の顔が見えた。行燈の明りに顔が映えて、眩しそうに眼をしょぼつかせていた。途端に三味線の糸が切れて撥ねた。すぐ二階へ連れあがって、積る話よりもさきに身を投げかけた。
二時間経って、電車がなくなるよってと帰って行った。短い時間の間にこれだけのことを柳吉は話した。この十日間梅田の家へいりびたっていたのは外やない、むろん思うところあってのことや。妹が聟養子をとるとあれば、こちらは廃嫡と相場は決っているが、それで泣寝入りしろとは余りの仕打やと、梅田の家へ駆け込むなり、毎日膝詰の談判をやったところ、一向に効目がない。妻を捨て、子も捨てて好きな女と一緒に暮している身に勝目はないが、廃嫡は廃嫡でも貰うだけのものは貰わぬと、後へは行けぬ思て梃子でも動かへんなんだが、親父の言分はどうや。蝶子、お前気にしたあかんぜ。「あんな女と一緒に暮している者に金をやっても死金同然や、結局女に欺されて奪られてしまうが落ちや、ほしければ女と別れろ」