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きかいなさいかい

奇怪な再会

芥川 竜之介

「大阪毎日新聞夕刊」1921(大正10)年1、2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,996 字 · 43 页

青空文庫

殊に庭へ下りた犬が、泥足のまま上って来なぞすると、一日腹を立てている事もあった。が、ほかに仕事のないお蓮は、子供のように犬を可愛がった。食事の時にも膳の側には、必ず犬が控えていた。夜はまた彼女の夜着の裾に、まろまろ寝ている犬を見るのが、文字通り毎夜の事だった。

「その時分から私は、嫌だ嫌だと思っていましたよ。何しろ薄暗いランプの光に、あの白犬が御新造の寝顔をしげしげ見ていた事もあったんですから、――」

婆さんがかれこれ一年の後、私の友人のKと云う医者に、こんな事も話して聞かせたそうである。

六

この小犬に悩まされたものは、雇婆さん一人ではなかった。牧野も犬が畳の上に、寝そべっているのを見た時には、不快そうに太い眉をひそめた。

「何だい、こいつは?――畜生。あっちへ行け。」

陸軍主計の軍服を着た牧野は、邪慳に犬を足蹴にした。犬は彼が座敷へ通ると、白い背中の毛を逆立てながら、無性に吠え立て始めたのだった。

「お前の犬好きにも呆れるぜ。」

晩酌の膳についてからも、牧野はまだ忌々しそうに、じろじろ犬を眺めていた。

「前にもこのくらいなやつを飼っていたじゃないか?」