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きかいなさいかい

奇怪な再会

芥川 竜之介

「大阪毎日新聞夕刊」1921(大正10)年1、2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,996 字 · 43 页

青空文庫

「私。私だ。私。」

声は彼女と仲が好かった、朋輩の一人に違いなかった。

「一枝さんかい?」

「ああ、私。」

「久しぶりだねえ。お前さんは今どこにいるの?」

お蓮はいつか長火鉢の前へ、昼間のように坐っていた。

「御止し。御止しよ。」

声は彼女の問に答えず、何度も同じ事を繰返すのだった。

「何故またお前さんまでが止めるのさ? 殺したって好いじゃないか?」

「お止し。生きているもの。生きているよ。」

「生きている? 誰が?」

そこに長い沈黙があった。時計はその沈黙の中にも、休みない振子を鳴らしていた。

「誰が生きているのさ?」

しばらく無言が続いた後、お蓮がこう問い直すと、声はやっと彼女の耳に、懐しい名前を囁いてくれた。

「金――金さん。金さん。」

「ほんとうかい? ほんとうなら嬉しいけれど、――」

お蓮は頬杖をついたまま、物思わしそうな眼つきになった。

「だって金さんが生きているんなら、私に会いに来そうなもんじゃないか?」

「来るよ。来るとさ。」

「来るって? いつ?」

「明日。弥勒寺へ会いに来るとさ。弥勒寺へ。明日の晩。」

「弥勒寺って、弥勒寺橋だろうねえ。」

「弥勒寺橋へね。夜来る。