轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

13 食魔

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,235 字 · 22 页

青空文庫

はユニークな存在で、そのリサイタルは、極めて少数の聴衆しか集めなかったにしても、情熱と讃美と、そしてほのかな愛情とに恵まれて居りました。

松尾葉子はその頃二十三、女の美しい峠でした。スラリと伸び切った背や、イギリスのビロードのような深い味のある黒髪や、少し蒼白い細面や、聡明らしい大きい眼や、情熱的な美しいカーヴを持った唇や、すべてがこの世のものとは思えぬ清純な感じで、その頃の青年達の間には「松尾葉子には内臓は無い、あれは蝋人形に息を吹込んだのだ」とさえ言われたほどです。

内臓を意識することの出来ないような、清らかな処女――それを想像して見て下さい。その処女がドビュッシやフォーレや、デュパルクや、フランクの世にも美しい歌を唱うのです。それはどちらかと言えば小さい声量でした。が、行届いた愛情と、聡明な理解で、「マンドリン」や「月光」や「夢の後」や「悲しき歌」やら、この上もなく優しく美しく、ほんのりした皮肉と、フランスらしい粋な陰影で、会場の空気を桃色にする術を、松尾葉子嬢は体得しているのでした。

その松尾葉子嬢が立ったのです。もとより食物に関するむずかしい話などのある筈もありません。