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おんなけんし
女剣士
「小説新潮 第八巻第八号」1954(昭和29)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,694 字 · 74 页
このたびの山中の修業、もうお前には充分だ。だが、オレはまだまだ、ここに残ってこれからがまことの修業にかからねばならぬ」
「歩く御様子が変ですね」
「ウム。邪魔物を切りとって参った。ここにあるのが、切りとった物だ。この物が山気生動雲をひらくうちはよいが、無用の一物となったときには人心の山気をも枯らす。雲をひらくべき剣をもさえぎる。まことに無用の長物。そちの教訓によって悟ることができた」
「これはアレかしら」
「そうだ」
「かつぐんじゃないでしょうね」
「ほれ、ごらんの通りだ」
朝之助は前をまくって松ヤニをつめた傷口を示した。歌子はシミジミと見て、ふきだした。朝之助もつられて大笑した。
「イヤ、まことにもって笑うべきだ。その方が笑ってくれて、助かったぞ。感謝いたす」
「そんなもの、記念にしまっておく?」
「イヤ/\。そちの首実検までに持参いたしただけだ。これはもはや雑兵だから、首オケもいらぬ。葬ってつかわそう」
「私が葬ってあげるわ。谷川へ捨てちゃう方がいいわね」
歌子は一物をつまんで谷川へ捨ててきた。岩の上からポンと投げて、ナムアミダブツとつぶやいた。まさに一人の雑兵を葬ったような気がしたのである。