轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

おんなけんし

女剣士

坂口 安吾

「小説新潮 第八巻第八号」1954(昭和29)年5月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,694 字 · 74 页

青空文庫

ただ父の子を生むことはわが家の歴史と現実から考えて父の説の如く極めて当然だと思っただけだ。

父がアレを切りとったのも分るような気がした。アレはたしかに無用だ。父がもう無用とみてアレを切ったのは父の場合たぶんたしかにそうなんだろうと思ったのだ。

しかし、人に別れた時というものはいろいろのことを考えついてしまうもので、歌子はたそがれの山径を歩いているとき、ふと眼下の谷底へとびこんで死にたいと思う気持になった。いっそこのまま山に溶け、谷の水に溶けてしまいたいと思った。

道場へ戻れば可愛い存八がいる。可愛い……とたしかに歌子はそう思った。それはちょッと嬉しくもあったが、しかし家へ帰るのもなんとなくつまらない。切りとったアレを父は雑兵と云ったが、それはたしかに雑兵だと歌子も思った。しかし、可愛い存八は人間全体が雑兵そのものだ。魂も根性も雑兵だ。そして、それだから可愛くもあるのだ。

その雑兵と世間なみに一しょになって、身のまわりの世話をやいたりやかせたりして、父としたようなあんなこともして子供を生んで……それもちょッとほほえましいことだと思うのであるが、しかし、そうまでならないうちに、いま山に溶け谷の流れに溶けて死んでしまった方がもっとよいことのような気がしたのである。