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じょせい

女婿

佐々木 邦

「主婦之友」1925(大正14)年9月~11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,954 字 · 43 页

青空文庫

「妙子さん、お気に障ったら堪忍して下さい。ねえ、妙子さん」

と寄り添って背中を擦った。

「余りです。余りですわ」

と妙子さんは肩で浪を打って擦らせている。自分こそ余りである。

「私が言い過ぎたんです」

と清之介君は何も言い過ぎた覚えはないが、兎に角早く泣き止んで貰いたかった。涙の前には理窟も膝を折る。婦人の泣くや、水力をもって男子を動かすとある。妙子さんは今新家庭第一回の戦端に完全な勝利を得て置く必要上、その水力を利用したのである。

「何も彼も辛抱する積りでいたのに、あなたの方から仰有るから、ついこんなことになったんですわ」

と妙子さんは充分目的を達した後、顔を上げた。

「もう申しません。御機嫌を直して下さい」

「私は証拠を握っているんですから、もう嘘はつかないで頂戴、ねえ、あなた」

「嘘は申しません」

「それが嘘じゃございませんか? 辻村が反対したほどの女でもないと書いてあるのに」

「書いてありますって? 何に書いてありました?」

「あなたの日記帳にちゃんと書いてありましたわ」

「日記を御覧になったんですか?」

「お悪うございましたか?」

「日記は困りますよ」

「でも夫婦の間に秘密はないとあなたは仰有ったでしょう。