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じょせい

女婿

佐々木 邦

「主婦之友」1925(大正14)年9月~11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,954 字 · 43 页

青空文庫

行き帰り素通りも失敬と思って一寸……」

と来客は直ぐに座敷へ通った。

「よく寄ってくれたね。未だ早いからゆっくり話し給え」

と清之介君は喜んだものゝ、先刻のような経緯の後、妙子さんが出てくれるか何うかを疑問にした。そこで木下君が、

「何うだい? 相変らず家庭円満かね?」

と冗談を言った時、

「有難う。然し妻は少し加減が悪いと言っていたから今夜は失礼するかも知れない」

と念の為めに仄かして置いた。話題に至っても先刻で懲りているから、一身上のことは避けるようにした。

しかし清之介君は要らない心配をしていたのである。妙子さんは程なく手ずから紅茶を薦めに現れたばかりか、愛想好く話し込んだ末、トランプを発起した。三四回目からは、

「只じゃ詰まりませんから何か賭けましょうよ。来月の歌舞伎を賭けましょう」

とあった。勝負がはずみ、結局発頭人の妙子さんがおごることになった。木下君は大満足だった。支配人の家へ御機嫌伺いに上るほどの会社員はその女婿の家庭で特に優待されることを遺憾と思わない。清之介君も辻村君の場合に引きかえて嬉しかったから、お客さんを送り出した時、

「妙子さん、有難うございました」