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じょせい

女婿

佐々木 邦

「主婦之友」1925(大正14)年9月~11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,954 字 · 43 页

青空文庫

「いゝえ、舎しますわ、今夜に限ったこともありませんから」

と妙子さんは思い止まった。清之介君は書斎へ引き取った。案外穏かに治まったので、矢張り時折は拒絶する方が宜いのかも知れないと考えた。

一時間ばかりすると、妙子さんはツカ/\と書斎へ入って来て、

「あなた、この間申上げましたように、電話を引いて戴きましょうよ」

と言いながら清之介君に寄り添うように坐った。唐突のようだが、これはもう長い問題である。折角里で架設してくれるという電話が、清之介君の固い辞退の為め、まだそのまゝになっているので、妙子さんが始終ヤキモキするのだった。

「ねえ、あなた」

「電話ですか? 電話は要らないじゃありませんか」

と何気なく答えながらも、清之介君は先刻の返報と覚って、一寸した出来心の我儘を後悔した。栄華の夢は長くない。

「あなたは要らなくても私は要りますよ。私、今日は電話の必要をツク/″\感じたんですから、何うか引いて下さい。引かせて下さい、ねえ、あなた」

と妙子さんはもう気色ばんでいる。

「妙子さん、電話だけは堪忍して下さい。この上そんなにして戴いては、私、困りますから」

「いつまでも他人行儀ね、あなたは!」