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じょせい

女婿

佐々木 邦

「主婦之友」1925(大正14)年9月~11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,954 字 · 43 页

青空文庫

表向きは何処までも電話で行く。

「妙子さん、電話の必要は私も認めています。しかしもう少時待って下さい」

「少時っていつまで待つんですか?」

「私の力で引けるまで待って下さい。里のお父さんにも私の心持は申上げてあるんです。あなたも聞き分けて下さい。ね、妙子さん、それが夫婦の情愛です」

と清之介君は再び頼み入った。

「強情ね。痩我慢ね。いつまでも、あなたは」

「…………」

「痩我慢ですわ。散々里の世話になって置きながら」

と、はしたない妙子さんは到頭行くところまで行ってしまった。

清之介君は両手で耳を掩うようにして机の上に突っ伏した。もう何と言われても黙っていた。

「ねえ、あなた」

と独り喋り倦んだ妙子さんが袂を引いた時、徐に身を起して、

「あなたがそれまでに仰有るなら、私も考えて見ます」

と言った。

「考えて下さい。そうして早く引いて戴きましょう」

「電話のことではないのです」

「それなら何を考えなさるの?」

と妙子さんは覚えず声を震わせた。我儘を通しながらもまさか万一と時折思っていたことに直面したのである。清之介君は頭を抱えて再び以前の姿勢に戻っていた。妙子さんは身をくねって覗き込み、机の上にポタ/\と涙が落ちるのを見た時、