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にょきゃくいっしゅうかん

女客一週間

豊島 与志雄

「新潮」1931(昭和6)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,724 字 · 26 页

青空文庫

いつどんな助けになるか分らない。自分だって、またいつ先生のお世話にならないとも限らない。ほんとに有難く思っている……。――だが、彼女はそんなことを云いながら、本当のことを云うと共に、また嘘をも云ってるのだ。家庭だの、プチ・ブルの生活だの、人と人との知合だの、彼女が考えてるのはそんなことばかりじゃない。口を利きながら、彼女の眼玉の奥には、他の或る思想が湛えている。先達の晩と同じだ。彼がその思想の方を見つめていると、彼女は眼を伏せて、御免なさい、と突然云いだしたものだ。身の上も事情も話さないで、ただお世話になったのは済まない、などと云うのだ。だが、事情というのは、或る事柄に関係していて――或る思想的秘密出版の手伝いをしていて、警察の方が懸念だったので、一時姿をかくさねばならなかった、とただそれだけのことなのだ。或はそれだけしか話せないのだ。而も、それも無事に済んでしまったらしいのだ。――つまらない。そんなことにこだわる必要はない筈だ。個人個人のこと、島村とかキミ子とか、二人の間の恩義だとか、そんなことは考える必要はなさそうだ。

「そんなことは聞かなくともいいよ。