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おんなにんじゅつつかい
女忍術使い
「文学界 第五巻第八号」文藝春秋新社、1951(昭和26)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,611 字 · 6 页
三百年前の大阪の陣のさなかに敵陣へ忍びこもうとフッと姿を消しちゃって、にわかにオックウになッちゃッて、戦場からそれちゃってさ。今もって姿を現さないスネ者の忍術使いがいるような気がするわね。いまだに、どこかに頬杖ついて退屈してるのよ」
「広島で頬杖ついてたとき、原子バクダンで死んだとさ。そういつまでも生きてちゃ気の毒だよ」
「思いやりがあるわね」
彼女はかなりお酒をのんでから、今の話を思いだして、
「あなたは六百年あとに勲章もらうわよ」
「誰から」
「退屈と戦える騎士一同に勲章あげる大統領がでてくるわよ。大きなお鍋に海水とムギワラ帽の廃物と何千匹のカナブンブンのような虫を何十年間もグラグラ煮たてて勲章こしらえるのよ。勲章ができあがってお墓の胸ンとこへつけてあげようと思ったら、安吾さんのお墓がないわね。アラどこへなくなっちゃッたと思ったら、はじめからお墓がなかったのねえ。そんな人間がほんとに居たかどうかも怪しいもんだ、なんて。ハッハッハ」
彼女の話は比喩が童話的であっても内容は甚だ現実的なのが普通であるが、この日に限って、内容も夢物語であった。
「フッと消えちゃダメよ」