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おんなにんじゅつつかい
女忍術使い
「文学界 第五巻第八号」文藝春秋新社、1951(昭和26)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,611 字 · 6 页
林さんは私にそう言ったあとで、その言葉がそれだけでは気にいらなかったらしく、
「本来、住所不定で、着ながしで、あなたは消える必要がないわよ。私が死んじゃっても、安吾さんだけはお葬式に来てくれないにきまってるんだもの、あなたとツキアッてる時は気楽で、たのもしくなるわよ。この人、私のお通夜にくる人かな、と思うと安心できないわねえ」
そうは云うが、彼女自身は人のお通夜へでかけるのがキライなんではなかったね。なんしろ、女はよく動くから。
十日ほど前、私は文藝春秋の用で長崎へ行った。泊る予定の宿が一パイだったから、鉄道案内所で福島屋へ紹介された。どのウチにも庭のない長崎には珍しく旅館の門をくぐってから石ダタミの坂を登り、大きな金看板のようなものが飾ってある玄関から、古色蒼然たる廊下をまがって階段を登って見晴らしのよい部屋へあがる。私は玄関に立った時から、ピクピクと鼻先に直感の閃くものがあったのである。
「林芙美子の匂いがするぞ。あの石ダタミと塀の壁から、もう匂ったぜ。益々匂うな、この玄関は。ウム。益々ムンムン匂うぞ、この廊下は。ヤ。まちがいなし。この部屋は、その物ズバリだ」