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じょなん

女難

国木田 独歩

「文藝界」1903(明治36)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,695 字 · 45 页

青空文庫

それですから小学校の教師さえも全くは覚束ないのですけれど、叔母の家が村の旧家で、その威光で無理に雇ってもらったという次第でございました、母の病気の時、母はくれぐれも女に気をつけろと、死ぬる間際まで女難を戒しめ、どうか早く立身してくれ、草葉の蔭から祈っているぞと言って死にました。けれどもどうして立身するか、それはまるで母にも見当がつかなかったのでございます。母は叔母の家から私の学資を出さそうとしたらしゅうございました。これが都合よく参りませんものですから、私の立身を堅く信じながらも、ただそれは漠としたことで、実は内々ひどく心痛したものと見えます。それですから母としてはただ女難を戒しめるほかに私の立身の方法はなかったのでございます。私はまたうまれつき意気地がないのかして、自分の立身のことにはどういうものかあまり気をかけませんでした。ただ母に急に別れたので、その当坐の悲しさ、一月二月は叔母の家にいても、どうかすると人の見ぬところで、めそめそ泣いておりました。

月日の経つうちに悲しみもだんだん薄らぎ、しまいには時々思い出すぐらいのことで、叔母の親切にほだされ、いつしか叔母を母のように思うて日を送るようになったのでございます。