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じょなん
女難
国木田 独歩
「文藝界」1903(明治36)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,695 字 · 45 页
十八の歳から、叔母の家を五丁ばかり離れた小学校に通って、同僚の三四人とともに村の子供の世話をして、夜は尺八の稽古に浮身をやつし、この世を面白おかしく暮すようになりました。尺八の稽古といえば、そのころ村に老人がいまして、自己流の尺八を吹いていましたのを村の若い者が煽てて大先生のようにいいふらし、ついに私もその弟子分になったのでございます。けれども元大先生からして自己流ですから弟子も皆な自己流で、ただむやみと吹くばかり、そのうち手が慣れて来れば、やれ誰が巧いとか拙いとかてんでに評判をし合って皆なで天狗になったのでございます。私の性質でありましょうか、私だけは若い者の中でも別段に凝り固まり、間がな隙がな、尺八を手にして、それを吹いてさえいれば欲も得もなく、朝早く日の昇らぬうちに裏の山に上がって、岩に腰をかけて暁の霧を浴びながら吹いていますと、私の尺八の音でもって朝霧が晴れ、私の転ばす音につれて日がだんだん昇るようにまで思ったこともあったのでございます。
それですから自然と若い者の中でも私が一番巧いということになり、老先生までがほんとに稽古すれば日本一の名人になるなどとそそのかしたものです。