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じょなん

女難

国木田 独歩

「文藝界」1903(明治36)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,695 字 · 45 页

青空文庫

『よろしい、見てやろうから出せ』

『出せって、今ここにはありません、ちょっと私の家へ来てもらいたいのでございますが』

『お家の宝、なんとかの剣という品物かな』と私がいいますと今度また妙に笑い出しまして、

『まずそんな物でございます、何しろ宝にゃ相違ないのだから、ウンそうだ、宝でございます』と手を拍ちますので私も不思議で堪りません、私の方からも見たくなりましたから、

『それじゃこれから一緒に行こう、サア行って見てやろう』とそれから二人連れ立ちまして、武の家に参りました。

前に申しました通り武の家は小さな坂の頂にあるのでございます。叔母の家からは七八丁もありましょうか、その坂の下に例の尺八の大先生が住んでいるのでございますから私も坂の下までは始終参りますが、坂に登ったことは三四度しかありません。この坂を越しますと狭い谷間でありまして、そこに家が十軒とはないのです。だからこの坂を越すものは村の者でもたくさんはないのでござります。武の家は一軒の母屋と一軒の物置とありますが物置はいつも戸が〆切ってあってその上に崕から大きな樫の木がおっかぶさっていますから見るからして陰気なのでございます。