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じょなん

女難

国木田 独歩

「文藝界」1903(明治36)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,695 字 · 45 页

青空文庫

母屋も広い割合には人気がないかと思われるばかり、シンとしているのです。家にむかいあった崕の下に四角の井戸の浅いのがありまして、いつも清水を湛えていました。総体の様子がどうも薄気味の悪いところで、私はこの坂に来て、武の家の前を通るたびにすぐ水滸伝の麻痺薬を思い出し、武松がやられました十字坡などを想い出したくらいです。

それですが、武から妙なことを言われて大いに不思議に思っている上に武の家に連れてゆかれますのですから、坂を上りながらも内々薄気味が悪くなって来たのです。途々、武に何を見せるのだと聞きましても、武はどうしても言わないばかりか、しめたという顔つきをして根性の悪い笑い方をするのでございました。

日はすっかり暮れて、十日ごろの月が鮮やかに映していましたが、坂の左右は樹が繁っていますから十分光が届かないのでございます。上りは二丁ほどしかありません、すぐ武の家の前に出ました。家の前は広くなって樹の影がないので月影はっきりと地に印していました。

障子に燈火がぼんやり映って、家の内はひっそりとしています。武は黙って内庭に入りました。私は足が進みません、外でためらっていますと、