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こうい
好意
豊島 与志雄
「改造」1924(大正13)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,059 字 · 40 页
神経が非常に尖っていて、それが一々患部を刺戟するような状態になっているので、最も平静にさしておかなければいけないと、眉をひそめながら云い置いていったそうだった。吉岡は別に苛ら立った風もなく、熱も下り咳も余り出なかったが、ただ脈搏が非常にいけなかった。
「それならば猶更、もうあのことには触れないで、そっとしとく方がいいでしょう。」
そう私は結論から先に云っておいて、前日の吉岡との話やその日の河野との話などを、かいつまんで敏子さんに聞かした。
「そんな風に変に気持が喰い違っているので、触れれば触れるほどこんぐらかるばかりです。黙ってそっとしとくより外はないと思いますが……。」
「そうでございますね。」
敏子さんは私の下手な説明が腑に落ちたかどうか、曖昧な返辞をしたが、不意にぎくりとしたような様子で、帯の間から大きな洋封筒を取り出した。
「でも、このお金は、どうしましょう。」
敏子さんはその洋封筒を、前日からずっと、そしてその日も朝から、帯の間に挾んで持ってたものらしい。それが妙に私の心を惹いた。
「そんなものはどこか、おしまいなすっといたらいいでしょう。そのうちに片がつくでしょうから。