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ようふ

妖婦

織田 作之助

「風雪 三月号」1947(昭和22)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,892 字 · 14 页

青空文庫

部屋にはいると、赤い友禅模様の蒲団を掛けた炬燵が置いてあり、風呂もすぐにはいれ、寒空を歩いてきた安子にはその温さがそのまま折井の温さかと見えて、もういやな奴ではなかった。

いざという時には突き飛ばしてやる気で随いてきたのだが、抱かれると安子の方が燃えた。

折井は荒木と違って、吉原の女を泣かせたこともあるくらいの凄い男で、耳に口を寄せて囁く時の言葉すら馴れたものだったから、安子ははじめて女になったと思った。

翌日から安子は折井と一緒に浅草を歩き廻り、黒姫団の団員にも紹介されて、悪の世界へ足を踏み入れると、安子のおきゃんな気っぷと美貌は男の団員たちがはっと固唾を飲むくらい凄く、団員は姐御とよんだ。気位の高い安子はけちくさい脅迫や、しみったれた万引など振りむきもせず、安子が眼をつけた仕事はさすがの折井もふるえる位の大仕事だった。いつか安子は団長に祭り上げられて、華族の令嬢のような身なりで浅草をのし歩いた。ところがこのことは直ぐ両親に知れて、うむを云わさぬ父親の手に連れられて、新銀町へ戻された。

戻ってみると、相模屋の暖簾もすっかりした前で職人も一人いるきりだった。