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ようふ
妖婦
織田 作之助
「風雪 三月号」1947(昭和22)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,892 字 · 14 页
安子は白髪のふえた父親の前に手をついて、二度と悪いことはしないと誓った。そして、父親の出入先の芝の聖坂にある実業家のお邸へ行儀見習に遣られた。安子は十日許り窮屈な辛棒をしていたが、そこの令嬢が器量の悪い癖にぞろりと着飾って、自分をこき使うのが癪だとそろそろ肚の虫が動き出した矢先、ある夜、主人が安子に向って変な眼付をした。なんだいこんな家と、翌る日、安子は令嬢の真珠の指輪に羽二重の帯や御召のセルを持ち出して、浅草の折井をたずね、女中部屋の夢にまで見た折井の腕に抱かれた。その翌朝、警察の手が廻って錦町署に留置された。検事局へ廻されたが、未成年者だというので釈放され、父親の手に渡された。
そんな事があってみれば、両親ももう新銀町には居たたまれなかった。両親は夜逃げ同然に先祖代々の相模屋をたたんで、埼玉の田舎へ引っ込んでしまった。一つには借金で首が廻らなくなっていたのだ。
安子も両親について埼玉へ行ったが、三日で田舎ぐらしに飽いてしまった。丁度そこへやってきたのが横浜にいる兄の新太郎で、
「どうだ横浜で芸者にならぬか」と、それをすすめにきたのだった。
「そうね、なってもいいわよ」