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ようえい

妖影

大倉 燁子

「オール読物」文芸春秋、1934(昭和11)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,489 字 · 22 页

青空文庫

と見る間にその目が大きくなって丸窓一杯にひろがり、遂々その窓が一つの目になってしまった。瞬きもしないで、その大きな瞳が私の顔を見詰めている。それがまたあのお嬢さんの眼そっくりだった。余り気にしているものだから、そんな夢を見たんだろうと可笑しくもなる。ほんもののお嬢さんの眼が覗いてくれたらどんなに嬉しいことだろう。私はなつかしい気持ちで窓を見たが、そこにはあの弱々しいお嬢さんの影さえもなく、朝の空気を吸いながら活発に散歩している西洋人の後姿が見えていた。

私も起きると直ぐ甲板を散歩した。段々顔馴染みの人が出来てきて、出会う度にお互に声をかけるようになった。私は何となくかの二人を待もうけるような心持で、朝も昼も食堂に出たが、隣りはいつも空席で、花のような形に折り畳まれたナフキンが、淋しくお皿の上にのっていた。私は気に懸るので、それとなく事務長に彼等の事を訊いてみた。

「お嬢さんが御病気で故国へ帰られるんだそうです」

「どういう御身分の方なんでしょうか?」

「高貴の出なんですが――、今は何もしていられないそうです。支那の大金持なんですよ」

「そうらしいですな。