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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

「わたしも、すこし、やつそと思って。」

いいわけしながら、思い出したように粉白粉をはたくこともあった。以前は見せたことのない態度だった。それと結びつけて、野村の子供から手紙がくるように誘いかけたのも閑子であろうと、ミネは思う。三畳にかくれるようにして閑子の編む手袋や、閑子の作るお手玉が、野村以外のどこの娘におくられると考えられよう。閑子はそこに一縷の希望をつなごうとしているのだ。バラの花の手紙を手にした閑子はうれしそうな、しかし皮肉も交えた顔で、これをみよとばかりにミネの手へそれを渡したのである。よんでしまって何ともいわぬミネに、

「ね、子供に文句はないんだもの。手紙ぐらいやりとりすることは許してくれたっていいでしょう。私だって子供は可愛いと思うのよ。親が何といったって、子供はこうして手紙をくれる――」

それで野村の気持をとり返そうと思っているのだろうか。そのことではもう、野村からはっきりことわられているのを閑子は無視しようというのだろうか。忘れてしまったというのだろうか。これまでにも閑子は、二度も三度も野村の家へ出かけてゆき、そのつど絶望して帰ってきた。