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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
気に入らぬ女となれば花を愛することまでもいやなのだと閑子はいうのである。その花々は閑子がわざわざ郷里からもってきて、野村との新しい生活の中へ移し植えたのだ。そうして閑子は去り、花だけが野村の家の庭に根を下したのだ。閑子に感慨がわかぬ筈はないが、とりにゆくというのはミネは反対だった。そして竹子にも告げずに過ぎたある日、野村から手紙がきた。――庭のあちこちから見知らぬ草が芽を出していると思っていたら、それに花が咲き出しました。閑子さんが植えていったのだと気がついて、毎日花におじぎをしています――。野村の人のよさがしみじみと伝ってくるような手紙であった。ミネはそこをくりかえしてよんだ。あれ以来肩身のせまい思いがして人にあうのも気がひけて、集りにも出てゆかないでいると今日もつけ加えている。そういえばここ暫く、研究会の集りなどに野村の姿を見かけたことがない。閑子との問題が後味わるくて出渋っているのだろうが、そこにも野村の小心さが感じられた。彼には彼の理由があって別れたのだから、堂々と人前に出てきてくれた方がよいのに、野村には「とつおいつ」の面があまりにも多すぎはしないだろうか。