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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

「ね、私がまいた豆、ひっこぬいてこようかしら。」

案外な気軽さでいうのだが、ミネにはどきんとするものがあった。

「じょうだんじゃない。」

「いけない?」

「いけないもいけなくないもないわよ。笑われるよ。」

「だって、私のまいたえんどうなんて気色がわるいだろうと思ってさ。」

「そんなら勝手にぬくわよ。」

「そうか。」

閑子はぺろっと舌を出した。その仕草がミネは非常にうれしかった。それは傷手に肉がもり上ってきているような感じだった。そしてひそかにほっとしたのだが、二三日たつと閑子はまたミネの部屋に入ってきた。

「ね、花の球根ならもらいにいっていいでしょう。」

彼女はもう身支度さえしていた。

「よしなさい。せめて花位残しといても悪くないよ。」

「だって、大事にして育ててきた花なんだもの。すてられたらいやなのよ。」

「そんなら竹子さんにたのんで、戻してもらおう。それがいいよ。」

仕方なさそうに閑子はあきらめた。冬ごもりの芍薬や牡丹や百合や水仙の芽がそれぞれもち前のみどりや赤のあざやかな色で土を割ってのぞいているのをみて閑子は思い出しているのだろう。花を好きな閑子を野村がその日記の中でけいべつして書いていたといって閑子は怒っていたのである。