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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

その手をミネにもつかっているのだ。しかしミネは野村のようにそれきりかかわりなしにはいられぬ。その翌日ミネは近所の運送屋をたのんで、さっさと荷造りをさせ、帰ればミシンが待っているようにとまだ主のいない田舎の閑子の家にあてておくらせた。閑子はそれで単純に喜び、急に帰り支度にはりを見せた。押入の中をかたづけ、洗たく、はりもの、仕立直しとミネたちのためにも精を出した。夜具も座ぶとんもノリがついてさらりと気持がよい。新しい雑巾が幾つもできた。よごれ物は何一つなくなった。それがすむと今度は埼玉の千枝の家の押入を目ざして出かけた。

「実用的な女ね。実用一点ばり。身を粉にして働くことだけが人間の本分だと思ってるのよ。切ないわね。」

「いないとほっとするなんて、不幸な女だね。野村のとこでもこれだったんだよ。分るね。」

「働いて、よく思われないなんて。」

閑子の留守をミネたちは、わびしく話しあった。その翌日貞子をたずねると、ミネの声を聞くなり、ちょうどよかったといいながら貞子は出てきた。そしていよいよ野村の結婚が決ったことをつげ、野村がその披露にミネたちを招待したものかどうかと相談してきているというのだった。