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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

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きわめて明るく書こうとして、書いてしまったミネは、さめざめとないた。仕事をする机の上で、仕事と同じ原稿紙に、誰にも告げずこんなことを書かねばならない辛さのために、泣かずにいられなかったのだ。悠吉にさえも、貞子にさえも話すことも出来ずに、これを野村に訴えねばならない悲しさ。壊れてしまったものを継ぎ合わそうとする空しい努力であるかもしれないが、閑子を思えば捨てては置けない。そして、これを閑子には知られたくない気持から、手紙は固く飯粒で封じ、翌日自分で出しに行った。人を喜ばせるためにのみ努力した結果がこんなことになるなど、しかもそれは、全然予期しなかったことではなかった筈なのに。貞子のあの含みのある言葉の数々が、笞となってこたえる。何故もっと大きくそれを考えなかったろうか。

ミネはその足で貞子の家へ行こうとした。貞子ならばまたちがった知恵を出してくれるかも知れない。目たたきしても瞼が熱っぽいほどのぼせた頭を、ミネは農婦のように手拭で包み、日かげをよってうつむいて歩いた。通りに向って同じように並んだコンクリートの塀を、貞子の家の方へ曲ると、思いがけなくぱったりと貞子に出会った。