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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
――閑子さんの手、足、腰の線、声、目、髪、そのどっかからもぐりこもうと思っても、私はいつかせんの女房の共通点をさがしているのです。閑子さんはまるでちがいます。せんの女房は九文の足袋をはく女でした。私の腕の中にはいってしまう女でした。子供はもう猫の子のようになついています。しかし、裁縫ができて、家計が上手だということだけで、男はなかなか惚れはしない。――」
堪えられなくなって、それをたたむミネの手はふるえていた。貞子が押えつけるような、少し癇高な声で、
「今更こんなこといったって、もう前へ進めるしか道がないじゃありませんか。ねえ。」
そして少し声を落し、
「やっぱりいけないのねえ。……きれいな奥さんだったもの。」
ほうっとためいきをしていった。ミネは、まだ空事を聞いているような、へんに実感の伴わぬ気持で、畳んだ手紙を封筒に戻すと、笑顔を作り低い声でいった。
「さあ、困った。」
不思議に気持が落ちついてきたような格好で貞子を見た。そしてもう一度手紙を手にとって眺めた。重ねてよむ勇気はなかったが、野村が閑子の留守にこれを書いたことが察しられ、遂に終局がきたということは考えられた。