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さいのひみつばこ

妻の秘密筥

佐々木 邦

「現代」大日本雄辯會講談社、1939(昭和14)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,212 字 · 25 页

青空文庫

「謂れのある独身生活だね。これは隅に置けないよ」

「うむ。これは見損っていたよ」

と海野君が溜息をついた。

「本当に柄にないことがあるものだな。しんみりしちゃったよ」

と但馬君も感激した。

「律義な人だ、案外。いや、失敬々々」

と木寺君はそれが有りのまゝの心持だったろう。

「君達は結構だよ。羨ましい」

広瀬君はいつになく穏健だ。

「君からそう言われると気味が悪いよ」

と僕が又相手になった。

「しかし僕は同時に自ら慰めるところもある。こうやって独身でいる方が安心だと思うんだ」

「何故?」

「光子さんの実例で察しるんだが、女ってものは皆秘密を持っているらしい。今更結婚しても、赤いリボンで束ねた手紙なんか持っている女を択り当てると大変だ」

「光子さんのようなのは特別さ」

「いや、女には皆秘密があるものらしい」

「良家の令嬢、深窓の佳人なら、そんな心配はない。そういうのを吟味して、早く貰うんだよ。光子さんだって賛成するだろう」

「光子さん自身が現に良家の令嬢、深窓の佳人だった。その後先方の親父が此方の親父を負かして市会議員に当選したくらいだから、買収力のある裕かな家庭だ」

「ソロ/\皮肉になって来たぜ」