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さいのひみつばこ

妻の秘密筥

佐々木 邦

「現代」大日本雄辯會講談社、1939(昭和14)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,212 字 · 25 页

青空文庫

「懺悔さ。悉皆僕の創作だ」

「ふうむ」

「それを本気にして、ノートを取ったんだから、君の小説も塩が甘いな」

「瞞したのかい? ひどい奴だな、この畜生!」

と僕は今更忌々しかった。但馬君が時折腕力を出すのも無理はないと思った。瞞された上に小説まで貶されたのではやり切れない。

「実は君達の家庭へ一波瀾起してやろうと思ったのさ。少くとも海野君の分は成功したらしい」

「質が悪いよ、君は」

「人生を教えてやるのさ。分りもしないのに芸術だの何だのと言って威張るからさ」

と広瀬君は痛快がっていた。

僕は後刻海野君に当って見た。自分が引っかゝらないと、他の人達の被害が馬鹿のメートルのように見える。

「何うだったい? 奥さんは秘密筥を持っていたかい?」

「そんな女房とは柄が違う」

「子供が三人もあっちゃ今更秘密筥でもあるまいな」

「実は訊いて見たんだが、女心の一筋に、憤って泣き出してしまった。子供が三人もあるのに、あなたは冗談にもそんなことが仰言られるんですかって」

「ふうむ」

「こういうこともあろうかと思って、子供が寝静まってから訊いたんだが、大きい奴が目を覚して、お父さんとお母さんが喧嘩だと騒ぎ立てた」