轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
むすめ
娘
岡本 かの子
「婦人公論」1939(昭和14)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,846 字 · 16 页
艇の惰力で、青柳の影の濃い千住大橋の袂へ近づく。彼女は松浦とそこから岸へ上って、鮒の雀焼を焼く店でお茶を貰って、雀焼を食べたことを覚えている。
松浦はなつかしい。だが、それは水の上でだけである。陸の上で会う松浦は、単にS会社の平凡で勤勉な妻子持ちの社員だけである。水の上であの男に感じる匂いや、神秘は何処へ消えるか、彼は二つ三つ水上の話を概念的に話したあとは、額に苦労波を寄せて、忙しい日常生活の無味を語る。彼女に何か、男というものの気の毒さを感じさせる。その同情感は、一般勤労者である男性にも通じるものであろう。
室子は、隅田川を横切って河流の速い向島側に近く艇を運んで、桜餅を買って戻る蓑吉を待っていた。
水飴色のうららかな春の日の中に両岸の桜は、貝殻細工のように、公園の両側に掻き付いて、漂白の白さで咲いている。今戸橋の橋梁の下を通して「隅田川十大橋」中の二つ三つが下流に臙脂色に霞んで見える。鐘が鳴ったが、その浅草寺の五重塔は、今戸側北岸の桜や家並に隠れて彼女の水上の位置からは見えない。小旗を立て連ねた松屋百貨店の屋上運動場の一角だけが望まれる。崖普請をしている待乳山聖天から、土運び機械の断続定まらない鎖の音が水を渡って来る。