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こんきはずれ
婚期はずれ
織田 作之助
「会館芸術」1940(昭和15)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,054 字 · 16 页
してみれば、おたかはうまく災難をのがれたようなものの、やはりその日一日中頭痛がするといって寝たままでいた。
八年経つと、五十七歳のおたかはどういうわけかめっきり肥えて、息苦しそうに立ち働いた。子供たちの年を考えれば不思議なほどの肥え方だと、あきれて近所の人は見た。永助は口髭を生やして四十歳だった。したがって義枝は三十四歳、定枝は三十一歳、久枝は二十五歳だった。持子は女学校を卒業して、いきいきと眼が綺麗だった。手足もすんなり伸びて、並んで立つと四尺八寸の義枝はあわれなほどひねしなびていた。けれども義枝の眼は駭いたように見ひらいて、澄んだ青さをたたえていた。浅黒い皮膚もなにか肌面がこまかくて、清潔な感じがした。それがおずおずと哀れめいた。
敬二郎は商業学校を卒業して商船会社に勤めていたが、五尺たらずゆえ二十一歳とは見えなかった。ある日、座敷に野良猫がのっそりはいって来るのを見て、敬二郎は、ああ怖やの、おーきイな猫が来よったと、悲鳴をあげた。痩せて顔色がわるく、しょっちゅう力弱い咳をした。毎日牛乳を二合宛のんだ。牛乳配達が来るたびにおたかは何か気にし、つまり敬二郎は肺が悪かった。