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ふじんとぶんがく

婦人と文学

宮本 百合子

※「作品について」参照

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页

青空文庫

気分に共感しようもなくひどく事務的に、女房に亭主が求めて来たしきたりそのもので、二階がひどいごみだという。その気分のくいちがいで明子はすらりと立てなかったのである。

日本の感情は、どうして文学者である男でさえ、男の云いつけることを、女がおとなしくきく、きかないに対して、こんなにも異様に敏感なのだろう。愛人たちの感情経緯のなかでは、愛の純朴を愚弄するくらいあれやこれやのコケトリーを容認しながら、良人と妻との日ぐらしの姿では、清純な女の愛のこころから行われる行為の選択さえ女の自然な味とうけとられず、女の反抗という感じでうけとられたり、かたくなさとして否定の面にだけみたりするのは、どうしてだろう。翻訳小説の中でなら、どんなに質量のつよい女性の生きかたも、人間の像、文学のリアリティーとして評価されるが、日本の文学、そしてそれが婦人によってかかれた小説では、明子の存在でさえも、日本の習慣の非近代性はもちこたえかねるのだろうか。

文学以前の問題として、日本のこれまでの社会には、愛の営みとしての夫妻生活の建設が殆どなかった。結婚生活というよりも、あるのはおおかた世帯であった。