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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
「へい、」
「今の、風説ならもう止しっこ。私は見たばかりで胸が痛いのよ。」
と、威しては可けそうもないので、片手で拝むようにして、夫人は厭々をした。
「いえ、一ツ心当りは無いか、家を聞いて見ようと思うんです。見物より、その方が肝心ですもの。」
「ああ、そうね。」
「どこか、貸家はあるまいか。」
「へい、無い事もござりませぬが、旦那様方の住まっしゃりますような邸は、この居まわりにはござりませぬ。鷹匠町辺をお聞きなさりましたか、どうでござります。」
「その鷹匠町辺にこそ、御邸ばかりで、僕等の住めそうな家はないのだ。」
「どんなのがお望みでござりまするやら、」
「廉いのが可い、何でも廉いのが可いんだよ。」
「早瀬さん。」と、夫人が見っともないと圧えて云う。
「長屋で可いのよ、長屋々々。」
と構わず、遣るので、また目で叱る。
「へへへ、お幾干ばかりなのをお捜しなされまするやら。」
心当りがあるか、ごほりと咳きつつ、甘酒の釜の蔭を膝行って出る。
「静岡じゃ、お米は一升幾干だい。」
「ええ。」
「厭よ、後生。」
と婆さんを避けかたがた、立構えで、夫人が肩を擦寄せると、早瀬は後へ開いて、夫人の肩越に婆さんを見て、