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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

直ぐに、これから、」

「どうぞそうなすって下さいまし、貴下、御苦労様でございますねえ。」

「御苦労どころじゃありません。さあ、お供いたしましょう。」

ふと心着いたように、

「お待ちなさいよ、夫人。」

四十一

早瀬は今更ながら、道子がその白襟の品好く麗しい姿を視めて、

「宵暗でも、貴女のその態じゃ恐しく目に立って、どんな事でまたその蠣目の車夫なんぞが見着けまいものでもありません。ちょいと貴女手巾を。」

と慌しい折から手の触るも顧みず、奪うがごとく引取って、背後から夫人の肩を肩掛のように包むと、撫肩はいよいよ細って、身を萎めたがなお見好げな。

懐中からまた手拭を出して、夫人に渡して、

「姉さん冠りと云うのになさい、田舎者がするように。」

「どうせ田舎者なんですもの。」

と打傾いて、髷にちょっと手を当てて、

「こうですか。」白地を被って俯向けば、黒髪こそは隠れたれ、包むに余る鬢の馥の、雪に梅花を伏せたよう。

主税は横から右瞻左瞻て、

「不可い、不可い、なお目立つ。貴女、失礼ですが、裾を端折って、そう、不可んな。長襦袢が突丈じゃ、やっぱり清元の出語がありそうだ。