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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
停車場の屋根はきらきらと露が流れて輝く。
例に因って、室々へ、雪洞が入り、白衣が出で、夫人が後姿になり、看護婦が前に向き、ばたばたばた、ばたばたと規律正しい沈んだ音が長廊下に断えては続き、処々月になり、また雪洞がぽっと明くなって、ややあって、遥かに暗い裏階子へ消える筈のが、今夜は廊下の真中を、ト一列になって、水彩色の燈籠の絵の浮いて出たように、すらすらこなたへ引返して来て、中程よりもうちっと表階子へ寄った――右隣が空いた、富士へ向いた病室の前へ来ると、夫人は立留って、白衣は左右に分れた。
順に見舞った中に、この一室だけは、行きがけになぜか残したもので。……
と見ると胡粉で書いた番号の札に並べて、早瀬主税と記してある。
道子は間に立って、徐に左右を見返り、黙って目礼をして、ほとんど無意識に、しなやかな手を伸ばすと、看護婦の一人が、雪洞を渡して、それは両手を、一人は片手を、膝のあたりまで下げて、ひらりと雪の一団。
ずッと離れて廊下を戻る。
道子は扉に吸込まれた。ト思うと、しめ切らないその扉の透間から、やや背屈みをしたらしい、低い処へ横顔を見せて廊下を差覗くと、表階子の欄干へ、雪洞を中にして、からみついたようになって、二人附着いて、こなたを見ていた白衣が、さらりと消えて、壇に沈む。