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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

「奥様は?」

とその顔へ、打着けるように声を懸けた。またこれがその(おう。)の調子で響いたので、お源が気を揉んで、手を振って圧えた処へ、盤台を肩にぬいと立った魚屋は、渾名を(め組)と称える、名代の芝ッ児。

半纏は薄汚れ、腹掛の色が褪せ、三尺が捻じくれて、股引は縮んだ、が、盤台は美い。

いつもの向顱巻が、四五日陽気がほかほかするので、ひしゃげ帽子を蓮の葉かぶり、ちっとも涼しそうには見えぬ。例によって飲こしめした、朝から赤ら顔の、とろんとした目で、お蔦がそこに居るのを見て、

「おいでなさい、奥様、へへへへへ。」

「お止しってば、気障じゃないか。お源もまた、」

と指の尖で、鬢をちょいと掻きながら、袖を女中の肩に当てて、

「お前もやっぱり言うんだもの、半纏着た奥様が、江戸に在るものかね。」

「だって、ねえ、めのさん。」

とお源は袖を擦抜けて、俎板の前へ蹲む。

「それじゃ御新造かね。」

「そんなお銭はありやしないわ。」

「じゃ、おかみさん。」

「あいよ。」

「へッ、」

と一ツ胸でしゃくって笑いながら、盤台を下ろして、天秤を立掛ける時、菠薐草を揃えている、お源の背を上から見て、